家督相続とは、明治〜戦後の昭和22年にかけてあった相続の制度のことです。今回は家督相続について詳しくご説明いたします。
家督相続の開始
家督相続は次のいずれかの事由によって開始します。
- 戸主の死亡、隠居、国籍喪失
- 戸主が婚姻または養子縁組の取り消しによってその家を去った時
- 女戸主の入夫婚姻または入夫の離婚
旧民法では相続は家督相続と遺産相続の2種類あり家督相続は被相続人が戸主で上記の理由により開始する相続でした。一方で遺産相続は家族(その家の戸籍にある戸主以外のもの)の死亡によって開始する相続です。
家督相続の効力
家督相続が開始するとその家の戸主が家督相続人である新戸主に交代します。家督相続人は前戸主の一身専属的なものを除いて一切の権利義務を承継します。(一身専属的なものとは簡単に言うとその人個人のみに与えられたもので、例えば医師免許などです。被相続人が医師免許を持っていたとしても、その相続人はそれを引き継ぐことは当然できません。)
なお戸籍の喪失により家督相続人となったものは原則として戸主権および家督相続の特権に属する権利のみを承継するため一般に戸主の交代はあっても家督相続による相続登記の対象にはなりません。
家督相続人になる人
家督相続人は通常の相続とは異なり新しい戸主になるため一人に限られます。家督相続人になる人は家督相続開始の際に生存していなければなりません。そのためすでになくなっているものやまだ生まれていないものは家督相続人にはなり得ません。
家督相続にも代襲相続の概念はあり、旧民法に定められた条文によって順番が決まります。例えば二人の男子の子供を持つ戸主が死亡した場合で、すでにその長男が亡くなっている場合は次男が代襲相続人となります。
まず一番原則的な順序として第一種法定家督相続人、指定家督相続人、第一種選定家督相続人、第二種法定家督相続人、第二種選定家督相続人の順番となります。
第一種の法定家督相続人ですが多くは戸主の長男がなります。すなわちその家の後継が長男ということです。前戸主である被相続人の家族である直系卑属が親等、性別(男性が優先)、嫡出非嫡出、年齢などの要素から優先順位が旧民法で定められておりそれに従います。
指定家督相続人とは、第一種法定家督相続人となる人がいない場合、戸主である被相続人があらかじめ指定することにより家督相続人を決定できます。
第一種選定家督相続人とは指定家督相続人や第一種法定家督相続人がいない場合において検討することになります。