相続財産が不動産のみと言ったケースはしばしばあります。一方で引き継ぐ相続人が二人以上いる場合で不動産が1つしかない場合、共有の持分で分けてしまうと権利関係が複雑になってしまうので、そうしないことが大半です。
基本的には一人が相続財産である不動産を取得し、その対価として他の相続人に代償金を支払うのが一般的です。このような分割方法を代償分割と言います。
代償金が支払われない場合
代償金が支払われない場合の対処法は以下の通りです。
- 紛争調整調停の申し立て
- 代償金支払い請求訴訟
- 抵当権の設定
- 相手方の住所地を管轄する法務局に供託
遺産分割協議書の有効性
では代償金が支払われなかった場合、遺産分割協議自体を取り消し無効にできるのでしょうか?債務不履行による遺産分割協議の解除は過去の判例でできないとされています。
代償金未払いにならないようにする対処法
相続人の善意を信じたいところですが、実際に代償金を支払わなくて困っているというケース等も過去にありました。そこで遺産分割協議書においては代償金が支払われないケースもきちんと記載しておく必要があります。
実際に下記のように直ちに強制執行できる条項が必要です。なお後述しますが、公正証書遺言で作成することが重要です。
第●条 相続人Xは相続人Yに対し前条の遺産取得の代償として1000万円の支払い義務があることを認め、これを令和7年1月20日に限り、相続人Y指定の下記口座に振り込む方法により支払う。振込手数料はXの負担とする。
第●条 相続人Xは前条の金銭債務を履行しないときは直ちに強制執行に服する。
債務名義の取得
今回、相続人Xが2000万円の価値の不動産を取得、相続人Xはもう一人の相続人Yに1000万円を支払うという前提で話を進めます。指定した期限までにXが振り込みをしなければYは大変困ります。
この場合YはXに対して法的手続きを通して強制的に代金を回収することになります。これを強制執行と言います。しかし強制執行をするにもルールがありいきなり義務を果たさない債務者に対して債権回収ができません。
まずYはXに対して訴訟等の法的手続きを通じて「債務名義」というものを取得する必要があります。例えばYがXを訴えYが勝訴しこの判決が確定した場合、「確定判決」として債務名義となりこれを根拠に強制執行ができます。訴訟上で和解が成立した場合も同様です。しかし裁判を行っては時間もお金もかかり大変です。
そこで遺産分割の際に協議書を公正証書遺言で作成し、債務者であるXが直ちに強制執行に服する旨の陳述をしておくと遺産分割協議書が執行証書という債務名義となり訴訟という労力をかけずに強制執行できるようになります。
財産の調査
強制執行とはいえ、債務者の全財産を自動で把握できるわけではありません。強制執行の対象となる財産の調査が必要になります。
弁護士に事件として依頼をすれば、弁護士→所属弁護士会→弁護士会から公務所、公私の団体へ照会をかけることが可能です。この制度は23条照会とも呼ばれます。