通常被相続人(亡くなった人)の意志を実現するには遺言という仕組みが利用されます。しかし従来の遺言制度では、カバーできないこともあります。そこで信託契約を結び、遺言や成年後見など現行の制度で不都合が生じる部分をカバーしつつ擬似的に遺言の内容を実現することができます。特に財産を託す相手が家族や親戚である信託の形態のことを総じて家族信託と言います。家族信託は新しい形の財産管理の手法と言えるでしょう。
家族信託の例
家族信託の一例として認知症対策があります。地主で不動産を大量に持っており、息子に相続させようと思っていても、一気に行ってしまうと相続税などがかかってため、不動産でも不要なものと必要なものを精査し売却をしたりなど様々な手続きを行い最適化した状態で移行すると数年かかってしまいそうというケースでは、本人を受益者、息子を受託者として、信託契約を結びます。それにより管理権限は息子に移行しつつ、利益はなくなるまで本人が受け取るといった構図ができ、さらに本人が認知症になった場合でも息子が受託者ですので、問題なく手続きを進めることができます。
公正証書による契約
家族信託は契約の一種です。契約は口頭でも書面でも成立します。契約書なので自分で作成しても構いませんし、公証役場で公正証書として書くことも可能です。
信託契約を公正証書で作成するメリットとしては、契約書を紛失しても再発行ができること、公証人が確認するので後日紛争になりにくいこと、契約後に金融機関等で信託専用口座を作成しやすくなるなどのメリットがあります。
一方デメリットとして、自分で作成する契約書に比べコストがかかることや平日日中(9時〜17時)しか作成できないことがあります。
しかし一般論として、公正証書による信託契約をお勧めいたします。コストがかかるというデメリットはあるものの自分自身で作成した契約書の場合、本人が知らないところで勝手に代筆、捺印したのではないか?、信託契約日に本人に判断機能があったのか?など後々トラブルに発展してしまう要素が多数あります。
また契約書を万が一紛失した場合でも、公正証書の場合原本が公証役場に保管されており正本を再発行できます。(公証役場に万が一の場合があった場合をご心配される方もいらっしゃいますがデータベースとしてもバックアップが保管されますのでご安心ください。)
家族信託を続ける時期
家族信託をいつまで続ければいいのか?という疑問が生じて来る方もいるでしょう。逆に言えば家族信託はいつ終わりがあるのか?結論から言うと、家族信託の目的、家族状況、資産状況などによって大きく異なります。そのためなぜ家族信託をやるのか?委託者の意思や願いはどこなのかを明確にしてゴールを決めて設計することが大事になります。
例えば、高齢の母親の認知症対策および相続税対策として行う場合は、あくまでも高齢の母親の財産管理、処分、承継が目的のため母親が亡くなったらその役割を終え信託契約を自動に終了させることがあります。
これ以外にも信託法という法律で信託の終了事由が記載されております。
第百六十三条 信託は、次条の規定によるほか、次に掲げる場合に終了する。