相続人が認知症であった場合、遺産分割協議はそのまま行っていいのでしょうか?また生前手続きで認知症になってしまったら遺言はかけるのか?
もしくは認知症になる前に対策できることがあればしておきたいこともあるでしょう。今回は認知症と相続の関連について解説します。
認知症とは?
認知症とは何らかの病気や障害等により脳の働きが悪くなり忘れ物がひどくなったり、日常生活に支障をきたす症状のことです。中程度以上の認知症になると遺言などを残すことが難しくなります。
脳自体は老化により少しずつ衰えていきますが通常の加齢による物忘れの場合、時間や場所は認識している、ヒントがあると思い出せる、日常生活に支障はないといった特徴があります。一方認知症の場合は体験全体を忘れてしまい、ヒントがあっても思い出せず日常生活に支障をきたします。
認知症高齢者の日常生活自立度1
日常生活自立度1の場合は、認知症はあるけれど、日常生活はほとんど問題なく生活できるレベルです。症状としては軽い物忘れや理解力の低下程度です。
認知症高齢者の日常生活自立度2a
日常生活自立度2aの場合は、日常生活に支障をきたす認知症の症状がたまに出るが周りに注意してくれる人がいれば自立できるレベルです。道に迷うことが増えた、買い物の簡単な計算がスムーズにできないなどがこれに該当します。
認知症高齢者の日常生活自立度2b
日常生活自立度2bの場合は、2aに加えて、お薬の管理ができない、電話の応対等が上手にできないなどが該当します。
認知症高齢者の日常生活自立度3a
日常生活自立度3aの場合は、日常生活に支障をきたす認知症の症状がときどきあり、介護を要する状態です。(食事や着替えが上手にできない、時間がかかる)見守りや支援が常に必要です。
認知症高齢者の日常生活自立度3b
日常生活自立度3bの場合は、3aの状態に加え、徘徊や奇声を出すなどの症状が夜を中心に見られる状態です。
認知症高齢者の日常生活自立度4
日常生活自立度4の場合は、日常生活に支障をきたす症状や行動が頻繁に見られ、常時見守りや介護が必要な状態です。
認知症高齢者の日常生活自立度5
日常生活自立度5の場合は、著しい精神症状や異常行動、体に重篤な疾患がある場合で専門医療を必要とする場合です。
遺言と認知症
まず大原則として意思能力のない人が法律行為をしても無効です。したがって認知症疑いのある人が遺言を残した場合、意思能力があったかが争点となります。
例えば公正証書遺言作成の場合、実際に公正証書遺言を作る前に公証人が名前や遺言を書く意思を確認します。その際の受け答えがあやふやだった場合、公証人から遺言の作成を断られることがあります。
また認知症疑いのある人の遺言でも、遺言の内容が、全財産を子Aに相続させるなどシンプルな物ですと遺言の内容が認められやすくなります。これ以外にも介護手帳や病院での履歴などから判断されることもあります。
相続人の一人が認知症で協議不能の場合はどうすればよいか?
認知症であっても相続権は失われないので、被相続人の財産を相続することはできます。ただし遺産分割協議は非常に重要かつ法的な意味のある行為ですので、判断能力のかける認知症の人で完結させることはできません。したがって法律行為の代理人を選任する必要があります。
認知症のように判断力に障害がある場合、本人、配偶者、家族などが家庭裁判所に申し立てをし、後見開始の審判をしてもらう必要があります。成年被後見人(認知症の人)審判を受けた人に成年後見人がつけられ成年被後見人を代理して法律行為を行うことになります。
共同相続人のうち一人が別の相続人の成年後見人になった場合は、相続に関して利益相反となりますので、特別代理人を選任することになります。特別代理人は家庭裁判所に申し立てすることで選任可能です。
認知症の本人が遺産分割に参加する場合
認知症の程度が軽度であれば、家庭裁判所に保佐開始の審判を申し立てて保佐人を選任してもらいます。このケースでは、保佐人の同意があれば本人が遺産分割協議に参加が可能です。