相続開始時に存在した相続財産が、遺産分割をする時には存在しないことがあることがあります。例えば、建物が火災により燃えてしまったり、地震により自宅が倒壊したり、津波に飲み込まれてしまったり、不動産や株式等の有価証券等を遺産分割前に相続人が売却処分した場合などがあります。また、相続人の一部が遺産分割前の建物を勝手に取り壊したり、高価な動産類を破棄してしまうようなこともあるかもしれません。
このような場合、遺産分割はどのように行われるのでしょうか?実務では、遺産分割の対象財産を定める基準時を遺産分割の時とする「遺産分割時説」が有力です。したがって遺産分割までの間に滅失・逸失した財産は、原則として、遺産分割の対象からは除外されることになります。
しかし、滅失・逸失した相続財産は、相続開始時に存在していた形態では存在していないものの形を変えて代わりになる財産として存在する場合があります。これを代償財産と言います。例えば火災により焼失したり、地震により倒壊した建物の場合にはその保険金、売却した不動産等の場合には売却代金と、取り壊したり破棄した建物・動産の場合には損害賠償金などが該当します。
代償財産と遺産分割
代償財産は遺産分割の対象となるのでしょうか?代償財産は、本来であれば相続財産として遺産分割の対象となるべきであった財産の価値を引き継いだものとみることができるため、遺産分割の対象としたほうが、自然と思われます。
最高裁判所の判決では要約すると。遺産分割の対象財産の確定時期は遺産分割時説をとるが代償財産については相続財産には当たらないと結論づけております。しかしながら共同相続人による合意がなされているなど特別な場合は遺産分割の対象となります。(合意があれば遺産分割の対象というのが通説。)
実際の遺産分割協議などでの取り扱い
先ほど判例や通説などを述べましたが、原則としては相続財産で滅失したものがある場合、それは相続財産から除外され、代償財産も相続財産にはあたらないというのが原則的な考え方です。しかし実際の遺産分割では相続人の希望などにより代償財産を遺産分割の対象とするケースもあります。このような場合詳細を遺産分割協議書にしっかりと残します。
遺産分割の対象としない場合には、売却代金のような可分債権については、判例の考え方に沿えば、各共同相統人が法定相続分に応じて固有の権利として、各々で取得することとなりますが、後々のトラブルを防ぐためには法定相続分に応じて取得した旨を遺産分割協議書に、金額と相続人全員は〇〇を遺産分割の対象とすることに合意し、といった文言を追加する必要があるでしょう。