遺言を作成する際、その遺言者自身がきちんと遺言を作成する能力があるかどうかが非常に重要になります。今回は遺言能力について詳しくまとめました。
遺言が認められる必要条件
まずは遺言が認められる条件を整理しましょう。条件は大きく2つあります。
1.満15歳以上であること
遺言は本人の意思であることが非常に重要なため代理で保護者などが行うことはできません。(とくに親族は法定相続人など利害関係がでてくるのでもってのほかです。)実際に民法962条で定められております。
第962条 第5条、第9条、第13条及び第17条の規定は、遺言については、適用しない。
- 適用が除外される条項は下記の通りです。
- 民法第5条→未成年者の法律行為
- 民法第9条→成年被後見人の法律行為
- 民法第13条→保佐人の同意を要する行為等
- 民法第17条→補助人の同意を要する旨の審判等
上記の通り代理行為が一切できないため、民法では15歳以上のものは遺言をすることができると定めております。未成年であるかどうかや親の同意などは一切関係なく、15歳未満が作成する遺言はできず無効であり、15歳以上であれば遺言ができるとされております。(民法961条)
なぜ成人ではなく15歳からか?というところですが、明治時代の旧民法では男性17歳、女性15歳で結婚が可能でした。婚姻できるなら、遺言もできるだろうという発想で、年齢が低い15歳から遺言が可能であると定められたというのが有力です。
2.意思能力があること
遺言を行う際、意思能力の有無が非常に重要となります。遺言をする際に、医者から認知症の疑いがあるとされた場合は無効んあるケースがあります。公正証書遺言でも取り消しになる可能性があります。
また遺言作成をサポートし、いざ公証役場で遺言を作成するというところまで漕ぎ着けても、遺言者が遺言日に意思疎通がしっかり取れない場合は、公証人より遺言が作成できないとなるケースもございます。
遺言者が成年被後見人の場合でも民法962条により代理はできません。従って代わりに行うということももちろんできません。
遺言能力がないと判定された事例
公正証書遺言作成において、公証人の質問に対し、言葉をもって回答することなく単に、肯定や否定の挙動を示しただけの場合、民法969条の2の口述とは言えず無効とされました。
遺言者は公正証書遺言を作成する3日前から昏睡状態で推移し、公正証書遺言作成の際には頷く、もしくは簡単な言葉しか発することができませんでした。
遺言無効を未然に防ぐには?
遺言が無効であるかどうか?については主に認知能力が争点となります。この認知能力の有無については医師のカルテなどが重要になってきますが、それもない場合、周りの人の証言などが根拠となります。人の記憶は曖昧であり、言った言わないのような水掛け論になるかねません。
そのため遺言を無効にならずしっかり残すには、できる限り根拠を揃えておく必要があります。そこで「長谷川式認知症スケール」などが、客観的な一つの指標となります。長谷川式認知症スケールとは精神科医の長谷川和夫氏が開発した認知症の簡易検査です。
認知症の疑いがあるかどうかをスクリーニングする目的で、医療現場でよく使われます。30点満点のうち20点未満の場合は認知症の疑いがあるとされております。(※21点だから認知症ではない、15点だから認知症であると断定するものではありません。)